第5回日中韓サミット(概要)
平成24年5月14日
5月13日、午前9時20分頃から約1時間半弱、中国・北京において第5回日中韓サミットが開催されたところ、概要は以下のとおり(出席者:野田佳彦総理、枝野経産大臣、齋藤内閣官房副長官、山口外務副大臣、長島内閣総理大臣補佐官他、中国:温家宝国務院総理他、韓国:李明博大統領他)。
1.首脳宣言及び付属文書の採択
会議の成果として、日中韓サミット首脳宣言及び「持続可能な森林経営、砂漠化対処、野生生物保全に関する協力についての共同声明」、「農業協力に関する共同声明」の2つの付属文書を発出した。
2.日中韓三国間協力
三首脳は、申鳳吉日中韓協力事務局長の出席を歓迎するとともに、日中韓協力事務局が日中韓協力の更なる進展に貢献することへの期待を表明した。また、三首脳は、本年4月に初めて開催された農業大臣会合を含め、日中韓三カ国の枠組みで幅広い分野での協力が進展していることを歓迎した。
(1)貿易・投資
三首脳は、日中韓投資協定が署名に至ったことを歓迎するとともに、本投資協定が経済分野における初めての三国間の法的枠組みを構築するものであり、歴史的意義を有するとの認識で一致した。また、野田総理から、日中韓投資協定は日中韓FTAの先駆けとなるものであり、投資協定の交渉妥結を弾みとして、高いレベルの経済連携を目指し協力を深めていきたい旨述べた。
また、三首脳は、日中韓FTAの年内の交渉開始につき一致した。
(2)東日本大震災
野田総理から、昨年の東日本大震災の際の、中韓両国からの多大な支援に改めて感謝の意を表し、震災で得た知見と教訓を国際社会と共有しつつ、協力を推進したい旨述べた上で、両首脳に対し、東日本大震災後の我が国産品への輸入規制や我が国への渡航制限について、最新の状況を踏まえた見直し・緩和への期待を表明した。
(3)環境・エネルギー
野田総理から、持続可能な社会の構築のためには、低炭素成長の実現が重要な要素であり、我が国は優れた低炭素技術や制度を有しており、積極的に貢献できる旨述べた。また、日本が主催した東アジア低炭素成長パートナーシップ対話の成果も活用し、日中韓三か国が連携して低炭素成長の実現に向けて取り組みたい旨を述べ、中韓両国から賛同を得た。
三首脳は、昨今のエネルギー価格の高騰に対する懸念を共有し、エネルギー市場の安定に向けた協力強化を目指していくことで一致した。
(4)人的・文化交流
三首脳は、三国間の大学間交流の強化に向けた「キャンパス・アジア」の取組の着実な進展を歓迎し、取組の更なる拡大及び進展を通じアジア地域における質の高い大学間交流と有為な人材育成に資するべく、引き続き連携していくことで一致した。野田総理から、観光分野では、2015年までに三国間の人的交流規模を2600万人に拡大するとの目標達成に向けて努力を継続したい旨述べた上で、両首脳に対し、中韓両国の渡航制限の見直し・緩和への期待を表明した。三首脳は、日中韓青少年交流が有意義との認識で一致した。
(5)海洋協力
野田総理から、海洋の安全確保は、三か国にとって極めて重要である旨述べ、三首脳は、海の安全確保のため、捜索救助に関する協力強化の重要性を再確認した。
3.地域・国際情勢
(1)北東アジア情勢
野田総理から、4月13日の北朝鮮のミサイル発射は、累次の安保理決議違反であるとともに、対話を通じた問題解決に向けた関係国の努力を損なうものであるため、極めて遺憾である旨、また、更なる挑発行為に対して警告する安保理議長声明が迅速に発出し、制裁措置の実効性向上を決定したことを評価する旨述べた。また、三首脳は北朝鮮の更なる挑発行為を防ぐことが重要であり、日中韓三か国が緊密に連携し、北朝鮮の更なる挑発行為の自制を求めていくことで一致した。さらに、野田総理は、拉致問題に関する韓国及び中国の支持・協力に感謝の意を表した。
(2)国際経済情勢
野田総理から、我が国が他国の先陣を切ってIMFに対して600億ドルの貢献表明を行ったことで、G20財務大臣会合で4300億ドルを上回る規模の資金基盤強化に合意できたことは大きな成果である旨述べた。
先般のASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議における地域のセーフティーネットであるチェンマイ・イニシアティブの強化についての合意について、三首脳は、アジア経済,世界経済にとって大きな成果であるとし、これを歓迎した。
(3)東アジア地域協力
野田総理から、東アジア首脳会議(EA)を、地域の共通理念や基本的なルールを確認し、具体的協力につなげる首脳主導のフォーラムとして発展させるべきである旨述べた。三首脳は、東アジア地域の包括的な経済連携(RCEP)に関して、交渉開始に向けて議論を加速化するため、ASEANプラスの新たな作業部会を遅滞なく設置できるよう三か国で協力していくことで一致した。
(4)軍縮・不拡散
三首脳は、ソウル核セキュリティ・サミットで、核セキュリティの強化に向けた国際的取組の具体的進展が見られたことを歓迎し、2010年NPT運用検討会議で採択された行動計画の着実な履行の必要性を共有しているものとの認識を共有した。また、野田総理から、核戦力面での透明性の向上及びCTBTの早期発効は重要である旨述べた。
(5)気候変動
野田総理から、COP17の成果を歓迎し、特に、ダーバン・プラットフォーム特別作業部会の設立を重要な成果を踏まえ、全ての国が参加する将来枠組みの構築に向けた国際的議論に積極的に貢献したい旨述べた。
(6)MDGs(ミレニアム開発目標)
野田総理から、2015年までのMDGs達成に向けた取組の加速化に加えて、2015年以降の国際開発目標の在り方(ポストMDGs)についても、人間の安全保障、衡平性・格差是正、持続可能性、成長・雇用創出といった分野横断的な要素である旨述べた。三首脳は、ポストMDGsの策定に関する議論において更に協力することで一致した。
●外務省プレスリリース