第4回日中韓サミット首脳宣言
2011年5月22日 於:東京
我々、日本国、中華人民共和国、大韓民国の三箇国の首脳は、2011年5月22日に東京にて会談を行った。
我々は、2011年3月11日に発生した東日本大震災により失われた尊い命、甚大な被害に対し、深い哀悼の意を表した。
今般の震災は、三箇国の国民の友情の絆及び地理的近接性にかんがみ、三国間協力が必要不可欠であることを想起させた。
こうしたことを念頭に、我々は三国間協力の包括的かつ継続的な進展の確かな勢いに満足の意を表するとともに、未来志向で包括的な協力パートナーシップをより一層強化するという意思を共有した。
我々は、三国間協力は、日本の早期復興に確実に貢献するものであるとの理解に基づき、特に災害や困難に直面した際に互いに助け合うことの重要性を共有した。
我々は、様々な分野における三箇国協力を通じ、この困難な状況を乗り越えようとする日本の努力を支えていく決 意を表明した。
我々は、今年韓国に設立される日中韓三者間協力事務局に関する進展を歓迎し、事務局が今後より一層三国間協力を強化するとの希望を表明した。
我々は、ハイレベルでの交流を維持・強化していくことを確認するとともに、三箇国それぞれのアジア政策に関する包括的、客観的かつ深い理解を促進し、地域における平和と安定に貢献するために、年次の日中韓高級事務レベル協議の際に、アジアに関する政策対話を開催することを決定した。
1.三国間協力
防災及び原子力安全
東日本大震災を踏まえ、日本は今般の原子力事故及び地震から得た教訓を、中国、韓国、及び国際社会全般と共有することを約した。
我々は、防災や原子力安全分野に関する三国間協力の重要性を再確認し、付属文書のとおり協力を推進していくことを決定した。
経済成長
地域の主要三箇国の首脳である我々は、三箇国が地域の活力やダイナミズムをより一層高めるために協力を強化し、アジアの力強い成長を導いていくべきであるとの考えを共有した。
この観点から三箇国間の経済連携の更なる強化に役立つであろう三箇国間の投資枠組みの一層の重要性を再確認し、可能な限り早期に投資協定交渉の実質合意が達成できるよう更なる努力が必要であるとの認識で一致した。
現在の日本の状況とその影響を考慮しつつ、日中韓FTA産官学共同研究の進展と経済貿易大臣及び外務大臣からの提言に留意し、我々は日中韓FTA産官学共同研究を本年中に終了させ,その後フォローアップを行うべく、同共同研究を加速化することを決定した。
我々は、食の安全及びエネルギー安全保障の重要性を再確認し、これらの分野における対話と協力を奨励した。
我々は、北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)の設立を歓迎し、日中韓物流大臣会合の枠組みにおける継ぎ目のない物流システムの構築及び三箇国間の陸と海を結合した輸送の早期実現に向けた進展を奨励した。
我々は、三箇国間の観光促進は経済の刺激、特に災害の影響を受けている日本の観光部門の刺激につながるとともに、他国に対する理解を深めることができることを確認した。
我々は、2010年の第5回日中韓観光大臣会合の際に設定された、2015年までに三箇国間の人的交流規模を2600万人に拡大すると いう目標を支持した。
我々は、こうした目標の実現や観光及び友好的な交流の促進にとって好ましい環境を生みだし、堅持していくために、三箇国が共に努力していくべきであるとの考えで一致した。
我々は、三箇国相互による一層の自由化を通じた航空ネットワークの拡充の重要性を確認した。
我々はまた、ビザ手続の迅速化に向けた取組を確認した。
我々は姉妹・友好都市交流の拡大を推進することが重要であるとの考えで一致した。
我々は、日中韓関税局長・長官会議の枠組みの下で、特に貿易円滑化や税関手続の改善に向け、より一層税関協力を強化していく。
環境と持続可能な開発
我々は、次世代のために地球規模の環境問題に対して国際社会で取り組んでいく必要があるとの認識の下、この分野での取り組みを率先していく決意を示した。
このような観点から、我々は、再生可能エネルギー及びエネルギー効率の推進を通じた、持続可能な成長に向けての協力の重要性を認識し、付属文書のとおり決定した。
我々は、韓国釜山で行われた第13回日中韓三カ国環境大臣会合の結果を支持した。
我々は、三カ国環境大臣会合の枠組みの下での三カ国共同行動計画の進展と、学生・ビジネスフォーラムの開催を歓迎し、気候変動、生物多様性の喪失など地球規模の環境問題、及び黄砂、酸性雨、及び廃棄物特に電気電子機器廃棄物(E-waste)の不法越境移動など地域の環境問題に緊急に対処するため、協力を強化する。
この点に関し、我々はE-wasteを含む廃棄物の違法な越境移動を撲滅するための協力メカニズムを確立するとの約束を評価した。
我々は、生物多様性第10回締約国会議での様々な成果に対する着実なフォローアップに向けて、緊密に協力していく重要性を強調した。
我々は、循環経済モデル基地構想設立に向けた探求についての基本的な考え方に関する継続中の議論に留意し、循環経済モデル基地の将来の枠組みについて、有益な協議を行う必要性を認識した。
我々は、準備作業を開始するための協力的な取組を加速化することを決定した。
人的交流及び文化交流
我々は、人的交流及び文化交流、特に若者間での交流が、三箇国間の相互の信頼を高め、未来志向の協力的な関係を強化するための基礎となると認識した。
このような基礎を下に、我々は、友好的かつ協力的な結びつきを促進するために、日中韓青少年交流事業に関連して、「次世代フォーラム」を組織することとした。
日中国交正常化40周年及び中韓国交正常化20周年を考慮し、我々は、2012年に、三箇国間での友好的な交流を特に強化することを決定した。
我々は、「キャンパスアジア」を通じた、三国間での大学間交流促進に向けた努力を歓迎し、出来るだけ早期に、パイロットプログラムが立ち上げられるよう希望した。
三国間の教育協力を促進するため、日中韓教育大臣会合のメカニズムを立ち上げるための努力を継続することとした。
協力の分野は、相互理解を促進し、協力的で未来志向の関係を築くための学生や教員の交流促進が含まれうる。
相互理解を深めるための文化交流の重要性を認識し、我々は、2011年の第3回日中韓文化大臣会合の際に発出された奈良宣言に基づき、三国間での文化交流を促進する具体的施策がとられ、2012年の第4回会合がそうした進展に寄与するものとなることを希望した。
我々は、日中韓文化コンテンツ産業フォーラムが、三国間の文化コンテンツビジネスにおける交流と協力を一層促進するよう貢献することを期待した。
その他
我々は、海洋の安全確保のため、捜索救助の分野における三国間協力の重要性を確認し、三国間でのより緊密な協力に期待を表した。
我々は、G20ソウルサミットで採択された「共有された成長のためのソウル開発合意」や「開発に関する複数年行動計画」が成功裏に実施されるよう、協力していくことの重要性を強調し、本年韓国釜山で開かれる第4回援助効果ハイレベルフォーラムで深く意味のある議論が行われることへの期待を表明した。
我々は、開発協力に関するそれぞれの政策について意見交換を続けることとした。
我々は、テロ根絶のためには、長期的で、近隣諸国との協力による連携した取組みが引き続き不可欠であることを再確認した。
この観点から、三か国首脳は、今後日中韓テロ協議が具体的な成果を出していくことへの期待を共有した。
我々は、ソマリア沖の海賊が国際航行及び通商航路の安全にとって、引き続き重大な脅威となっていることを深刻に懸念する。
我々は国際社会と協力しつつ、共通の脅威への対処に関する取組を強化するとのコミットメントを表明した。
この分野における三国間協力を強化することを決定した。
2.地域・国際情勢
北東アジア情勢
我々は、朝鮮半島の非核化は北東アジアの平和と安定に大きく貢献するとの見解で一致した。
北朝鮮が主張しているところのウラン濃縮計画に関する懸念が表明された。
我々は、真摯なかつ建設的な南北対話が必須なまでに重要であることを強調し、六者会合の再開に資する環境を醸成する上での具体的行動の重要性を強調した。
我々は、2005年の六者会合共同声明の目標を実現することに対するコミットメントを再確認した。
東アジア地域協力
我々は、平和で安定し、繁栄した東アジアを実現するため、日中韓サミット、ASEAN+3、東アジア首脳会議(EAS)、ASEAN地域フォーラム(ARF)、APECを含む既存の枠組みを通じて地域協力を推進するとのコミットメントを再度表明した。
我々は東アジアの地域協力の原動力としてのASEANを支持し続ける。
この点に関し、我々は本年からのEASへの米国とロシアの参加を歓迎した。
我々は東アジアの地域協力を推進するため、三箇国並びにASEAN及びその他のパートナーとの間で緊密に協力することを約する。
軍縮・不拡散
我々は、核兵器不拡散条約(NPT)に対する我々の強いコミットメントを再確認した。
我々は、国際的な安定を促進する方法で、また、すべてにとって損なわれることのない安全保障の原則に基づき、核兵器のない世界を追求するために他国と協力する意思を表明した。
我々は、2010年NPT運用検討会議の最終文書を履行する我々の決意を強調した。
我々は、2012年の核セキュリティ・サミットを韓国が主催することを歓迎し、同サミットの成功に向けて緊密な協力を継続することを再確認した。
国際経済情勢
我々は、世界経済の不確実性及び潜在的なリスクを含む国際経済情勢に関する諸問題を議論した。
強固で持続可能かつ均衡ある成長を実現するために、我々は、特にG20ソウル・サミットの成果を着実に実施することにより、G20及び他の適切なフォーラムを通じて、世界経済の課題に対処すべく、共同で行動することへのコミットメントを改めて表明した。
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外務省プレスリリース