第4回日中韓サミット(概要)
平成23年5月22日
5月22日、午前9時30分より約2時間、東京・赤坂迎賓館において第4回日中韓サミットが開催された(出席者:菅直人総理(議長)、松本外相、海江田経産相、福山内閣官房副長官他、中国:温家宝国務院総理他、韓国:李明博大統領他)ところ、概要以下のとおり。
1.首脳宣言及び付属文書の採択
会議の成果として、日中韓サミット首脳宣言及び「原子力安全協力」、「再生可能エネルギー及びエネルギー効率の推進による持続可能な成長に向けた協力」、「防災協力」の三つの付属文書を発出した(別添)。
2.三国間協力の進捗と今後の方向
はじめに、菅総理の呼びかけにより、参加者全員により、今回の東日本大震災の犠牲者の方々のために一分間の黙祷を行った。
その後、菅総理から、東日本大震災に関する中韓両国の支援及び連帯の表明、特に前日に両首脳がタイトな日程の中、仙台及び福島の被災地、避難所を訪問したことは同地域及び日本全体の安全性を内外にアピールする上で大きな助けになったことに深い感謝の意を表した。
その上で、菅総理から、我が国の経済は短期的には下押し圧力であるものの、本年後半からは経済も回復基調に入るとの見方を説明し、今回の震災を「危機の中における危機」から復活し、日本を新たな活力ある社会として再生させる機会と捉え、諸外国の活力も取り込みつつ、復興に取り組みたいとの意思を表明した。
また、中韓両首脳から、東日本大震災の被害に哀悼とお見舞いを示した上で、困難な状況の中、予定通りに今次サミットを開催した日本側の努力に感謝する、日本の復興に向けて可能な限り協力していきたいとの発言があった。
(1)原子力安全
菅総理より、福島第一原発の現状に関する詳細な説明を行い、今回の事故で得た知見と経験を、最大限の透明性をもって国際社会と共有しつつ、原子力発電の安全性向上に向けて、情報共有等を通じた三国間協力を推進していきたい旨述べた。
加えて、日本産の食品・物品に対する科学的根拠に基づいた対応を要請し、日本の復興を応援する意味でも、中韓両国からこれまで通り日本を訪問し、日本の産品を買ってほしい旨述べた。
三首脳は、原子力安全に関する三国間協力を推進することで一致し、「原子力安全協力」に関する合意文書を発出した。
(2)再生可能エネルギーとエネルギー効率の推進を通じた持続可能な成長
菅総理より、日中韓三か国は気候変動問題、資源の制約への対応といった共通の課題を有しており、再生可能エネルギーの導入及びエネルギー効率の改善を通じ、持続可能な成長の実現に向けた未来志向の三国間連携を進めていくべきである、また、気候変動対策の観点からも、低炭素技術・製品の普及等を通じた協力が適切に評価される枠組みの構築が重要である、また、東アジアにおける持続可能な成長を主導するべく、緊密に連携したい旨述べた。
(3)防災
菅総理より、今般の東日本大震災の経験と教訓を踏まえ、防災分野で三か国協力を強化したい、具体的には(1)訓練の実施・能力の向上、(2)災害発生時の迅速かつ円滑な意思疎通の確保、(3)緊急援助チームや物資の派遣・受け入れ調整の円滑化、(4)防災に関する技術の推進や情報共有の強化を進めていきたい、また、これらの取組を進めるに当たっては日中韓協力事務局の活用も一案と考える旨述べた。
中韓の両首脳からも、同様に三か国での防災協力の重要性に関する発言があり、今後三国間で協力していくことで一致し、「防災協力」に関する合意文書を発出。
(4)経済成長
三か国の首脳は、日中韓投資協定の早期実質合意を目指すことで一致するとともに、日中韓産官学共同研究を本年中に終了させるべく加速化することで一致。
これに加え、菅総理より、中韓の観光客がもたらす経済効果は我が国の復興に向けて大きな力となることから、中韓の観光客が再び日本を訪問するよう、両首脳の協力を頂きたい、また、2015年までに三国間の人的交流規模を2600万人にするとの目標達成に向け、協力を進めたい旨発言。
さらに、菅総理より、レアアースをはじめとする鉱物資源の円滑な供給が困難となれば、経済的に緊密な相互依存関係にある三か国の経済活動にも影響を及ぼすこととなることから、鉱物資源の安定供給に向けた対話・協力を一層促進していくことが重要である旨述べた。
また、菅総理から税関当局間の協力強化の重要性について指摘。
(5)人的・文化交流
菅総理より、いずれかの国が困難な状況にあるときこそ、人的・文化交流を活発化させ、国民レベルの絆を深めることが重要であると述べ、三国間で大学間交流の強化に向けた「キャンパス・アジア」が進められていることを歓迎。
中韓両首脳よりも人的・文化交流の重要性を指摘。
(6)環境と持続可能な開発
菅総理から、昨年の環境大臣会合で策定された三か国共同行動計画に言及し、黄砂や海ゴミ対策等の環境協力を更に推進していきたい旨発言。
また、菅総理から昨年我が国で開催された生物多様性条約COP10の成果を三か国で着実にフォローアップしていきたい旨述べた。
(7)その他
菅総理から、海洋の安全確保は、海に開かれた三か国にとって極めて重要であり、日中二国間の海上捜索救助協定交渉を早期に妥結させたい旨を述べ、三か国を取り巻く海の安全確保に向けて三か国で協力したい旨発言した。
また、菅総理から開発の経験の共有を通じ、国際社会の開発課題に効果的に取り組むため、今後も開発に関する意見交換を行っていきたい旨述べた。
また、三首脳は日中韓協力事務局設立協定の発効を歓迎し、早期発足に向けた協力を確認。
3.地域・国際情勢
(1)北東アジア情勢
北東アジア情勢に関し、六者会合共同声明に従った諸懸案の解決に向けて、具体的行動を北朝鮮から引き出すべく、三国間で連携していくことで一致した。
菅総理より、北朝鮮のウラン濃縮活動は安保理決議及び六者会合共同声明の明らかな違反であり、懸念を表明。
その上で、六者会合を通じた非核化を実現するためにも、国連安保理等の場でしっかりとしたメッセージを発出することが重要であり、常任理事国である中国の役割に対する期待を表明した。
また、菅総理より、六者会合議長国である中国の外交努力を評価する旨述べた上で、今後北朝鮮は速やかに南北対話において昨年の2度の挑発行為や非核化について前向きな姿勢を示した上で、六者会合における自らの約束を真剣に実施する意思を具体的行動で示さなければならない旨述べた。
さらに、菅総理より、拉致問題の解決に向けて、韓中両国からの更なる協力を要請した。
(2)東アジア地域協力
菅総理から、日米同盟を外交の基軸としながら、既存の地域協力の枠組みを活用し、開かれた形で重層的に地域協力を強化していく考えを示し、日中韓でも協力していきたい旨述べた。
また、菅総理から、東アジア首脳会議(EAS)に関して、米露の参加を契機に、重要性が一層高まるところ、従来からの取り組みを更に発展させるとともに、政治・安全保障分野での協力を強化したいとの考えを示した。
(3)軍縮・不拡散
菅総理から、核軍縮、不拡散、核セキュリティ、原子力安全の取り組みを包括的に進め、核リスクを低減させることが、アジアの中核としての責務であり、2010年NPT運用検討会議の行動計画を着実に履行する必要がある旨を指摘した。
また、三首脳は、2012年に韓国で開催予定の核セキュリティーサミットに向けて、協力していくことを確認した。
(4)国際経済情勢
菅総理から、昨年11月のG20ソウル・サミットでは、韓国の議長の下、世界経済の成長に向けた取組を強化し、開発問題など新たな課題にも取り組むことができた、今後は、世界経済の持続的成長に向け、各国がそれぞれの責任に基づき、具体的な行動を取ることが必要である旨を述べた。
三首脳は、一次産品の価格高騰は世界経済のリスクであるとの見方で一致し、11月のG20カンヌ・サミットに向けて、日中韓で協力していくことで一致。
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外務省プレスリリース